私が鳶職を始めた時代は、仕事は盗んで覚えるやり方でした。その頃は、競争率が高く職人の差も大きかったと思います。上下関係というよりも、出来る者が新人を小馬鹿にしている様な関係が多くありました。その頃、テレビで大手企業が社員教育の一環でマニュアルを作り、社員に同じ仕事の流れを教えるという教育方針を知りました。私は、努力して掴んだ仕事のスキルを渡すということに驚きました。職人は仕事ができれば腕一本で食べていけるという時代でしたから__。
現在、弊社ではマニュアル化を実践しています。危険なことや仕事の流れは、まず手本をやって見せる、そして実際にやらせてみる。きちんと説明し、正確に理解した上で任せてみる。この様に、時代と共に鳶の仕事も進化しています。今では、最先端の技術を取り入れているスーパーゼネコン担当の職長から私が教えられる、という嬉しい状況です。それでも「昔のやり方すべてが今の時代に向いていない」とは言えません。当時の受け継ぐべき技術がたくさんあります。この様に、弊社では「古き良きものは継承し、時代と共に進化し、古き者が新しい者から学ぶ」というサイクルで上昇を続けていきます。